「That’s法政二」高3 古典探究
2025年6月高3古典探究チーフ
高3古典探究では、高校古典学習の集大成として年間を通じて『源氏物語』を扱い、生徒達の班発表を中心に授業を展開しています。高1言語文化では文法事項の基礎理解を進めつつ、様々な時代の古典に触れ、高2では平安時代の教材を中心に据えて、当時の時代背景や文法事項・語句からどのように解釈が立ち上がるかをねらいとして学習をしてきました。高3では、高1・高2で培ってきたそれらの知識や古典を読むために必要なプロセスを踏まえて、1班4人程度の体制で班ごとに与えられた課題に取り組み、発表する形式で授業を進めています。今年度から一人一台端末が導入されたので、生徒達は「配信された古文の本文と現代語訳」「補足資料(時代背景・古典常識等)」「ジャパンナレッジ(オンライン辞書・辞典サイト)」等の資料をiPadで画面分割を駆使して表示しながら、発表準備を進めています。発表の内容は、単に現代語訳を読んでどのような内容だったかをまとめるのではなく、重要となる古典の表現や語句に着目し、語句の原義・ニュアンスまで意味調べをして、語句や文法事項・時代背景も含めて立ち上がってくる解釈を説明するものとしています。生徒が提出する発表資料はクラス全員にデータで配信されて、その内容自体がクラス全体の復習用の資料も兼ねるので、資料の構成・配置の工夫や、図表や色を用いて見やすくするといった努力も多く見られます。発表を聞く生徒たちは、配信された班発表資料を自分のiPadで参照しながら、線を引いたり書き込みをしていき、発表後はその班への質問をしたり、リアクションシートに発表を聞いて理解を深めた内容を書き込むといった取り組みを通して、発表をする側・聞く側共に主体的に取り組む姿が見られます。教員はいわゆる板書をして生徒に書かせるスタイルではなく、発表準備段階での声かけ・やり取りや、発表した班との間での質疑応答を通して補足や重要事項の確認を行う形で、あくまで生徒主体のカリキュラムを通して理解させていくよう心がけています。
『源氏物語』は1000年以上の時を超えて読み継がれている名作です。価値観・常識等様々に異なる時代背景の物語ですが、それでもなお読み継がれる理由の一つは、そこに描かれる人物達の姿や心情の機微が優れた現実性・普遍的な人間の姿を映し出しているからだと言えます。生徒達には、時代背景や平安貴族社会の常識を理解させた上で、それらの時代背景を理解して初めて鮮明に見えてくる登場人物の心情や、時代や設定が全く異なっていてもなお、現代の我々と共通する人間の姿や、やむにやまれぬ心情の機微を掴んでもらうことを一番の目的としています。それは古典世界に留まらず、今の自分たちの姿を捉え返し、他者理解のあり方の本質にもつながる大きな意味を含んでいると考えます。そうしたねらいの元、与えられた現代語訳のみで理解したつもりになるのではなく、例えば『源氏物語』に度々出てくる「あはれなり」という言葉の原義・ニュアンスを調べて理解した上で、文脈や登場人物の置かれた状況ごとに異なる「あはれなり」という心情の内奥まで迫っていけるように、自分たちで読み、意味調べをして、自分たちなりの訳や解釈を立ち上げていく班活動になることをねらいとしています。このように、高3古典探究では、古典の最高傑作とも名高い『源氏物語』を通して、言葉と向き合い、その背景に広がる世界も含めた他者理解、そして自己理解への捉え返しという大きなテーマに繋がるための生徒主体の授業を展開しています。


